
昨年、PARIS出張の際、どうしてもピエール氏にお願いしたいことがありました。
きっかけは、2023年春。
ANATOMICA KYOTOの内装打ち合わせで来京していたピエール氏が着ていた一着のジャケットです。
“HOUND’S TOOTH”のジャケット。
その存在が、ずっと頭から離れませんでした。
実はこのジャケット、2022年のANATOMICA SAPPORO周年の際にも着用されており、その時に私自身も購入していた思い入れのある一着。オーナー山内をはじめ当時の札幌メンバーも愛用していたモデルです。
この素材で、FRENCH GARMENTSを作りたい。
そう考え、PARISで直接ピエール氏に伝える事を決意するのです。

ANATOMICA PARISに到着後、2026年の春夏のオーダーの打ち合わせに。
このタイミングだと思い、”山内も着ているHOUNTD’S TOOTH”の生地でFRENCH GARMETNSを製作できませんかと尋ねました。
しかしピエール氏の返答は「とても気に入っている生地だけど、もう残っていないと思う。」
やはり廃盤か。
そう諦めかけたその時、チャールズ氏が生地スワッチを手に取り、ストックを探してくれました。
結果は——
「少量ならあるから枚数限定で作れるよ。」
こうして今回のプロジェクトが実現しました。

この”HOUND’S TOOTH”の生地は、アイルランドの老舗リネンメーカー
”BEHAN社”によるものです。
本来ベッドシーツやカバーに使用される生地なので、目を凝らすとかなり太い番手のリネン糸が丁寧に撚られており、ヴィンテージのような肉厚な生地。
この生地を使用したかった理由は柄もそうですが、古き良きヨーロッパのリネンの素晴らしさを感じる事ができるからです。
アイルランドのリネン産業は、かつてイギリスの軍需を支えた重要な基盤でした。
リネンは兵士のシャツ、ベッドリネン、医療用途まで幅広く使用され、高い強度、濡れても落ちない耐久性、衛生性。
そういった特性から、過酷な環境に適した実用素材として位置付けられていました。
この生地に見られる、わずかなムラや粗さ。
それは現代的な均一さとは異なる、使われるための素材としての痕跡です。
一方で”HOUND’S TOOTH”という柄は、スコットランドのカントリーウェアに由来します。
本来はウール素材と共に発展し、
汚れが目立ちにくく、耐久性にも優れることから、日常的に酷使される衣服に用いられてきました。
本来同じ文脈にある”HOUND’S TOOTH”と”BEHAN LINEN”。
僕らが重視したのは“用途に対する必然性”。
「どのような環境で、何のために使われていたのか」という背景も大事にしました。
ANATOMICAのFRENCH GARMENTSの背景とも通づるこの生地で、”DOLMAN,1841,SAGAN VEST,ARTHUR”の4型を製作しました。

ANATOMICAが30年間に渡り大切にしてきた物作りの背景や思想を、今回製作させていただいた”札幌店・京都店”限定のプロダクトから感じていただけたら嬉しいです。
ANATOMICA
宅見
